滅びた色・貴重な色

白狐通信

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滅びた色・貴重な色

色の不変性

色の普遍性

皆さん、色は無限にあるようですが、果たしてそうでしょうか。
混ぜたり、重ねたりすれば色は生まれる、そのような考えも出来ますが、絵の具の品質を守る上で重要なのは、色の不変を保つことです。

職人さんの技術と経験により保たれる色

職人さんの技術と経験により保たれる色

例えば上羽絵惣の水干絵具(すいひえのぐ)の群青、いつ作っても同じ群青でなければなりません。
材料が変化したり、不足したりしても、品質や色になるべく支障が出ないように、職人さんの目と腕が非常に重要ですが、材料の変化は時とともにやってきます。

儚く滅びていく色たち

儚く滅びていく色たち

日本画絵具の中には毒性の強いものも少なくありません。
伝統的な色の中でも重要な色の一つである「本朱」(ほんしゅ)。
美しく神聖なこの色は、神社仏閣の朱塗りにも使われますが、原料は猛毒の「水銀」です。
以前この「本朱」を焼いて作る「本古代朱」(ほんこだいしゅ)という色がありました。
古びたような色には、「古代」と付ける事が多いのですが、いにしえの響きと色の美しさにファンも多かった上羽絵惣の「本古代朱」は、もう現存しません。

美しく神聖な「本古代朱」

美しく神聖な「本古代朱」

猛毒の「水銀」である「本朱」(ほんしゅ)を焼いて作る「本古代朱」(ほんこだいしゅ)とはどんな色でしょうか。
元々「朱」は鮮やかな赤みを持った橙色をしていますが、焼くことで美しい紫がかった褐色のような味わい深い色に変化し、「古代朱」となるのです。
しかし今「本朱」を焼く職人さんはいらっしゃいません。
焼くと有毒なガスが発生し、職人さんの体を蝕む事がわかった事もあり、このような危険な工程を経なければ作れないため、もう作ってはいけない色となりました。

日本文化と密接に関わる大切な色

日本文化と密接に関わる大切な色

健康を害するとして、作り続けることは出来なくなってしまった「本古代朱」(ほんこだいしゅ)。
この貴重な色は儚くも滅びの道をたどりました。
残念ですが、それも時の流れなのかもしれませんね。
美しい色を持つものには多くの場合、毒があります。
生き物もそうですね。
そして今は「本朱」そのものも「硫化水銀」という危険物として取り扱いが厳しくなっています。
しかし、日本画や文化財に欠かせない色である「朱」、毒性に気をつけながらも守っていきたい大切な色ですね。

貴重になった鮮やかな赤 コチニール

貴重になった鮮やかな赤 コチニール

時代とともに原料である鉱物が採れなくなったり、特に天然の原料の規制が厳しくなったりする事で、「本古代朱」(ほんこだいしゅ)のように滅びてしまう色が他にも出てくるかもしれません。
「コチニール」は南米ペルーのサボテンに付くカイガラムシから取れる鮮やかな赤い色です。
昔から食紅としても親しまれてきたこの色も、カイガラムシの減少やアレルギー反応を起こすなど、人体に与える影響への懸念により、とても貴重な色になっています。

消えかけている藤黄

消えかけている藤黄

「藤黄(とうおう)」という色は別名ガンボージとも呼ばれる植物の樹液から作る明るい黄色で、漆のように木につけた傷から染み出した樹液を容器にためて固めたものです。
この色も外国からの輸入に頼っていますが、年々需要の減少とともに樹液を取る農家が減少しているそうで、いつ無くなってもおかしくない色です。

色を守り伝えること

色を守り伝えること

違う材料で代用出来なければ、滅びることになるかもしれない。
色には、そんなデリケートな一面もあるのです。
年々貴重になっていく素材を使った色や、伝統の色をなるべく滅びさせないように再現し、再生しながら、大切に守り伝えていくのも、上羽絵惣の使命だと感じています。

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更新日: 2020年3月6日